- ワンポイントレッスン
エイズ、結核、マラリアの3つを三大感染症といい、WHOも感染の防止対策に力を入れている。
この中で感染者が最も多いのは?
マラリア。世界で3億人を超える(エイズ感染の10倍)。死亡者は年間100万人にも達する。アフリカや中南米、アジアの熱帯、亜熱帯地方で蔓延化している。
マラリアの病原体はマラリア原虫で、ハマダラ蚊が人を吸血するときに体内に侵入する。感染防止には蚊帳(かや)が効果的だ。
細かい網目状になったおおいを室内につりさげて、おおいの内側に入ることで、外側からの蚊の進入を防ぐことができる。
カヤツリグサという薬草があるが、茎を引き裂くと、蚊帳をつったような形になることから名づけられたという。
WHOはマラリア対策に蚊帳を配布している。すでに数億張りを配り、アフリカのサハラ地区を中心に効果を上げている。しかし、今問題になっているのは、その蚊帳が殺虫剤をしみこませた蚊帳であることだ。
殺虫剤として使われているのはピレスロイド系のペルメトリン。
ピレスロイド系は、神経細胞に直接作用して神経伝達を阻害することで殺虫作用を現すが、人体に対する影響は少なく、広く家庭用殺虫剤として利用されている。タンスの防虫剤も、シラミの駆除にシャンプーに使われるフェノトリンも同じピレスロイド系だ。
ところが、ペルメトリンは、水棲生物に毒性があるので欧州では農薬としての使用が禁止されている。また、ペルメトリンを胎児期のマウスに与えると、ごく微量でも生後の知能や運動能力に障害が出たという研究もある(国立環境研究所)。同じことがヒトにも起こらないという保証はない。
蚊帳がマラリアを媒介する蚊をエコロジカルに防いでくれる有効な手段であることはまちがいない。しかし、マラリア予防と引き換えに、健康を害するおそれがあり、環境汚染にもつながりかねない薬物の使用はどこまで許されるのだろうか。