- ワンポイントレッスン
サブロウ「この前でてきたコリンエステラーゼですが、少しわかりにくいのですが…」
それじゃまず、アセチルコリンについておさらいしてみよう。
副交感神経の末端に刺激が伝わると放出されるのがアセチルコリンだったね。受け取る側の効果器には受容体が並んでいる。アセチルコリンは、受容体に結合することで信号を伝える。細胞と細胞がバトンリレーしているようなもので、バトンの役割をしているのがアセチルコリンっていえるかもしれない。
効果器に信号を伝えたら、アセチルコリンはいつまでも残っている必要はない。そこですぐに分解されるようになっている。この分解する働きをするのがコリンエステラーゼという酵素なんだ。
ユキエ「コリンエステラーゼって、酵素なのですか。だから、名前がアミラーゼとかリパーゼとかと似ているのですね」
いいところに気がついたね。アミラーゼやリパーゼは、デンプンや脂肪を分解する消化酵素。それに対してコリンエステラーゼは、アセチルコリンを分解する酵素ってこと。くわしくいうと、アセチルコリンは酢酸とコリンがエステル結合してできている。このエステルを分解するはたらきをすることから、エステラーゼという名前でよばれている。
コリンエステラーゼが、もし作用しなかったらどうなるかを考えてみよう。
サブロウ「アセチルコリンが分解されないまま残るので…」
ユキエ「副交感神経が興奮した状態が続きます」
コリンエステラーゼ阻害薬は、そうした作用を持っている。
阻害薬には大きく分けて2種類ある。ひとつは、一時的に阻害するけど、時間がたつと もとにもどるもの。カーバメイト系の殺虫成分や、目薬に使われるメチル硫酸ネオスチグミンがそうで、可逆的とよばれている。それに対して、有機リン系は、不可逆的に阻害する。つまり一度コリンエステラーゼの働きを失わせるともとにもどらない。
サブロウ「なんか最近、過去問やっていて一度眠くなってしまうと、もうもとにもどらないのですが、これはひょっとしてコリンエステラーゼが不可逆的に阻害されているっていうこと?」
ユキエ「なわけない」