- ワンポイントレッスン
ノロウイルスの話。
みんなも知っていると思うけど、ノロウイルスには消毒用エタノールでは効果がない。次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系を使って消毒しなければならないっていわれている。
なぜエタノールは効果がないのか、考えてみよう。
ユキエ「エタノールは、一般細菌、真菌、ウイルスに対して効果があるって習いました」
サブロウ「ノロって、ウイルスですよね」
ユキエ「そう。だからエタノールで効いてもよさそうなのに…」
サブロウ「そもそもエタノールは、どんなふうに微生物を殺菌消毒するんだろう」
ユキエ「たんぱく質を変性させることによるって習ったはず」
サブロウ「そうでした」
ユキエ「生たまごが固まってゆでたまごになるのも、たんぱく質の変性よ」
サブロウ「早口言葉に聞こえるんだけど。なまたまごゆでたまごたんぱくしつ」
いいところに気がついたね。
たまごが蛋白質でできているように、細菌や真菌を形成している細胞には、蛋白質が含ま れている。エタノールはその蛋白質に作用して、変性させることで殺菌消毒している。
ウイルスの場合はどうだろう。
ウイルスは、細菌や真菌とちがって細胞構造を持たない。細胞がないのだから蛋白質もな いのだろうか。
実は、多くのウイルスは、エンベロープとよばれる膜状のもので囲まれている。この膜は、細胞膜に似ていて、蛋白質もふくまれている!
エタノールはこのエンベロープを攻撃して、変性させることによってウイルスにも消毒効 果を発揮することができる。ところが、エンベロープがないウイルスもある。ノロウイルスもそのひとつ。
すると、どうだい?
変性させようにも蛋白質がないのだから、効果も期待できない、というわけなんだ。
これに対して、塩素系の殺菌は、酸化作用による。酸化ってわりやすくいうと、ものを燃やすこと。すごく激しい。細菌、真菌、ウイルスであろうが、エンベロープがあるないに関係なく燃えるものがあれ ば燃やしてしまうっていうイメージ。こわいよー。
エタノールがゆでたまごだとすると、塩素系はたまご焼きってところかな。