- ワンポイントレッスン
プラセボ効果(プラシーボ効果)という現象についてご存じでしょうか?
医療知識のある方や心理学を勉強したことのある方は耳にしたことがあると思いますが、それ以外の一般の方にとっては頻繁に耳にするような言葉ではないかもしれません。
そこで今回は、プラセボ効果についてご紹介します。
◆プラセボ効果とは?
偽の薬を処方されたにもかかわらず、患者が本当の薬だと信じて疑わずに服用することによって、患者に何らかの症状改善が現れる現象のことを言い、別名で偽薬効果とも呼ばれます。
ただし、必ず効果として現れるわけではありません。プラセボ効果の発生度合いは患者によって個人差が大きく、偽薬の服用で大きな症状改善効果が現れる人もいれば、全く効果が現れない人もいます。
◆名前の由来
プラセボ(placebo)の語源は、「喜ばせる」「満足させる」という意味のラテン語です。
狭義には、患者を満足させるために用いられた薬効成分を含まない偽薬を意味します。
◆メカニズム
1.暗示効果(楽観的な結果への期待)
強制されていないにもかかわらず特定の考え・意見・価値観などを受け入れ、人間の思考・感情・価値観・行動などに変化が生じます。
多くの人は、医師の言葉の信用性は高いと考える傾向にあり、医師が実施する医療行為を受ければ病気が良くなるという自己暗示のもとで、自らも病気が良くなるような思考・行動に移り、結果として病気が快方へと向かうと考えることができます。
2.条件付けによる生体反応
何度も同じ経験をすると、次第に条件反射のように行動反応が変化します。
ロシアの生理学者イワン・パブロフが行った実験(パブロフの犬)のエピソードが元になった理論です。
《犬にエサを与える前に必ずベルを鳴らす➡犬はベルが鳴ってからエサを食べるという経験を繰り返す➡ベルが鳴っただけで犬はヨダレを垂らすようになる》
梅干を見ると唾液が出てくるのも同様のメカニズムによって起きています。
つまり、人は小さい時から病院へ行き薬をもらって服用すると症状が良くなるという経験を繰り返すので、次第に薬を服用する行為自体が症状改善の契機となっている可能性が高いと考えられます。
3.自然緩解(時間経過による自然発生的な変化)
人の身体の中には免疫システムが存在し、それらが働くことにより、病気の治療をしなくても回復することがあります。
◆副作用がある?
たとえ偽薬であっても、副作用が現れることはあります!!
気にかかる情報、間違った思い込み、悲観的な予測、好ましくない過去の経験、不信や不安等といった心理が影響して望まない症状が引き起こされることがあり、これをノセボ効果といいます。
★プラセボ効果は、医療の世界で様々な形で利用されていますが、その効果の発生メカニズムは未だ明確に解明されていません。また、プラセボ効果の発生には個人差があり、病気の症状改善効果が現れる可能性があっても、それは可能性に過ぎず、積極的に病気の治療手段として期待することはできません。メカニズムの解明には、今後の研究を待つより他ありませんが、プラセボ効果を上手く利用していくことが求められるでしょう。
監修:長沢利枝講師