- ワンポイントレッスン
せきが続く。息切れして、呼吸が苦しいこともある。高熱と下痢もでてきた。といえば、まず思い浮かぶのは…。
「かぜです。」
そうだよね。でも薬の副作用で起こったのだとすると?
「間質性肺炎ですか。」
そう。かぜや気管支炎の症状と似ていて、区別するのが難しく、胸部X線写真、CTを使ってはじめて判明する。間質性肺炎が起こる原因となる一般用医薬品には、かぜ薬とか、漢方薬の…。
「小柴胡湯!」
サイコウ!よく覚えてるね。みんなもいいかい、知らなかった人はいま覚えよう。
そして、今回の「イレッサ」。
イレッサは、肺がんの治療薬として02年に医療用医薬品として登場。分子標的治療薬といって、正常な細胞には影響を与えずに、悪性腫瘍だけを選択的に攻撃してくれるので、副作用も少ないと思われていた。夢の新薬として、申請して5か月で、世界に先がけて輸入が承認された。
何年もかかるのがふつうなのにずいぶん早かったと思わないかい。(新薬では、臨床試験データを集める手続きなどで、10年以上たっても承認されないこともあるくらいだ。)それだけ、新しい薬に望みを託する患者も多かったということかもしれないね。
ところが、イレッサを服用した患者から間質性肺炎が多数発症、これまで800人以上亡くなった。副作用の危険性があったのに十分に知らせなかったと、国と輸入販売会社が訴えられた。
「薬害訴訟ね。どうなったのかしら。」
上告審がまだだけど、原告敗訴がほぼ確定するみたいなんだ。(2013年4月2日)
「原告敗訴ってことは…。」
国にも販売業者にも責任はないということだよ。副作用と死亡に因果関係がない、説明書の「重大な副作用」欄に危険性が書いてある、と裁判所は判断したようだ。
副作用は重大だ。でもイレッサの場合、肺がんのうち、8割を占めるタイプに実際に効果がある。手術ができなかったり、他の薬では効かなかったりする患者にとっては、有効性が高い。
「危険性を知った上で、それでも使うかどうか、考えなければいけないということですね。」